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ダムめぐり/「群馬最古」のダムを追え/その2

須摩野ダムの存在を調べる

月夜野町からの返事

ダムすごろくの須摩野ダムの回では、月夜野町に問い合わせたところ「三峰湖が須摩野ダムのダム湖ではない」という返事をいただいたと書いたが、その他に須摩野ダムの場所を「上毛高原駅の先にある県道月夜野猿ケ京温泉線を登った左手にある」と、具体的におしえていただいた。よし、さいころの目が須摩野ダムを出したら今度はたどり着くぞ、と思っていたのだがどうにも年内にたどり着けそうに無いので、雪が降る前に見ておこうと11月20日に出かけてみた。

ところが、現地に出向いてみるとそれらしい湖が全く見つからない。というわけで、2度目の空振りである。紅葉は奇麗だったけど。

デスクワークしてみよう

さすがに攻め方を変えないとという訳で、本腰を入れて資料に当たってみようと県立図書館へと向かった。まいどまいどお世話になります。

まずは、1階の隅にある郷土誌関連の棚から月夜野町の郷土誌を見つけてみるが、見当たらない。カウンターで聞いてみると現在修復中とのこと。ただ、貸し出しはできないが2階に郷土資料が置いてあるということを案内され、どうにか資料にたどり着く。まず手にした昭和61年発行の「月夜野町史」をめくる。「幻の沼田ダム」なんてちょっと心引かれる記事に寄り道しつつ、須摩野ダムについて記載されているページにたどり着いた。
名称 位置 築堤年次 受益面積(ha) 満水面積(平方メートル) 流域面積(ha) 満水深(m) 貯水量(立方メートル) 備考
須磨野下溜池 上組 江戸時代 17.5 2597 6.5 3.9 5060 56年以降改修工事中
須磨野上溜池 上組 明治39年 17.5 3725 9.7 4.3 8000
※月夜野町史 農業用溜池(かんがい用貯水池)一覧表(五十年調査)(p560〜561)より抜粋

どうやら、須磨野と付く溜池は二つあり、一つは江戸時代に、もう一つは明治期に作られているらしい。この上溜池の築堤年明治39年というのは、ダム便覧に掲載された須摩野ダムの竣工の年の1906年と一致する。さらに読み進めるとこんな表もあった。
名称 位置 水面積(坪) 水深(尺) 堰堤高長(尺間) 灌漑面積(町)
須磨野溜池 月夜野・須磨野 1500 11 18〜40 2.5
※月夜野町史 江戸時代の溜池(p580〜581)より抜粋

前表から言えば、現在下溜池と呼ばれている池の事を記述しているのだろうか。1尺は30.3センチメートルくらいだから堰堤の高さは5mから12mということだろうか。この高さだといわゆるダムの基準から外れることになる。

そして見え始めたもの

また、月夜野町というのは昭和30年に桃野村と古馬牧村という二村が合併してできた町という事で、旧市町村の資料はないかと書棚を当たってみたら、月夜野町が昭和47年に復刻した明治43年に刊行された「桃野村誌」という郷土誌が見つかった。ぱらぱらとめくってみるといきなり7ページ目で須摩野溜池の記述を見つける事ができた。
名称 位置 種類 水面積 水深 堰堤高長 同上/内法外法 灌漑反別 関係区域 備考
須磨野 月夜野須磨野 予備 五反歩 十一尺 十八尺四十間 同(六寸七寸五分) 二十五町歩 月夜野上組区 潤沢
須磨野二号堤 月夜野須磨野 予備 二反歩 十尺 十五尺二五間 同(六寸七寸五分) 同上 須磨野堤と同所灌漑ス
※桃野村誌 溜池調(p7〜8)より抜粋

上の表と違い、溜池ではなく堰堤について説明している表のようなので、名称の対応を考えないといけないが、水深の大小から須磨野堰堤=上溜池・二号堤=下溜池と対応すれば良いだろうか。

項目について見て行くと、7つ目の項目の内法外法は何を表しているのか良く分からない(1寸は3センチ、ってことは18センチの何かなのだろうが、思いつかない。)が、それは置いておくとして、とりあえず他の項目を見てみる。注目すべき点は堰堤の高さである。そのまま読めばどちらも5m前後となり、ダムの基準からかなり外れたダムという事になる。また、この記事を書いていて気づいたのだが、ダム便覧掲載のダム名が「須摩野ダム」であるのに対し、両郷土資料に掲載されている溜池の名前は「須磨野」となっている。いつの間に漢字がかわってしまっている。はたして、このデータの混乱はいったいどこにつながるんだろう。

ちなみにこの溜池の項では須磨野溜池について「殊ニ大字月夜野町字須磨野溜池ハ明治三十八年米作凶歉ノ為ニ、有志者相図リ救済工事トシテ新設シタリ」と特に記されている。なかなかいろんな歴史を背負っているようである。

ところで、図書館の2階には県内のゼンリン住宅地図が置いてある。ひょっとしたら須摩野ダムも乗っているかなぁと軽い気持ちで手に取ってみたら、「須摩野」溜池が34ページに掲載されていた。月夜野町からのメールの返答通り県道左手ちょっと脇道を入ったところに確かに二つ並んであった。凄いぞ、住宅地図。とりあえず、これはもう一度行くしかない、そう思った。