[an error occurred while processing this directive] 堰堤のまわりで-富士・大沢崩れをたずねて

富士・大沢崩れを訪ねて(前編)


調査日:2002年5月27日

 幸田文の著作に「崩れ」という紀行文がある。たまたま目にした大谷崩(静岡県・安倍川源頭部)をきっかけに七十過ぎだった作者が全国各地の崩壊地を訪ね歩くというもので、崩れを通してそれを取り巻く人々や作者自身を歯切れの良い美しい文章で描いている。この中で、幸田文が訪れている崩壊地の一つに、今回取り上げる富士山の大沢崩れがある。というわけで、自分でも無理をしているとは承知の上であえて幸田文の足元をたどってみようと思う。

御殿場ICからの富士山 河口湖駅

 東京駅から高速バスに乗り(往復3,000円ととっても安い)車内で過ごすこと2時間40分、河口湖駅に到着。びっくりするほど晴れている。妙にポジティブな浮き足立ち気味の気持ちを押さえつつ、富士山へのバス切符を買うために売り場でバックを空けると財布がない。変な汗を流しながら駅窓口に駆け込むと、財布が届いていた。初っ端から、泣きそうである。

 新五合目 

河口湖駅前から出ているバスにのり、新五合目まで登る。実は富士山の山開きは7月だということを高速バスの車内で初めて知り、「雪でどうにもならないのでは…。」とびくびくしていたのだが、新五合目にはそのかけらすらなく、団体客でものすごく混雑していた。予想外の人の量を前にうつむきがちな気持ちは加速する。

導流堤遠景 スバルラインと導流堤 導流堤に登る人

 さて、今回歩いたのは「お中道」という富士山の標高2400m付近をぐるっと回る道で、途中いくつかの沢を横切ることとなる。沢といっても別に水が流れているわけではないのだが、上から下に向かって火山礫が流れている跡を見ることができる。写真の個所では下を走る富士スバルラインも沢を横切っているので、安全に流下させるために導流堤とジェットが作られている。この導流堤は見た感じでは火山礫を袋に詰めたものを積み上げ、金網で形作っているようである。おそらくは環境保護と景観の問題からだろうが、詳しい事情が知りたいところだ。ところで、この場所でどこかのツアーに参加している人が添乗員らしき女性にこれが何なのか聞いていたが、その女性が「景色を眺めるためのものです」と答えていた。さすがにどうかと思う。

5月なのに雪 あらら、曇ってきた 

 途中雪が道をふさいでいるような個所があったものの、道が良く整備されていたので別段迷うこともない。山頂の方を見ると朝と比べて雲が出てきたのがちょっと気がかりだが、目の前に広がる非日常な荒涼とした景色に楽みを覚えつつ先へと進んだ。「新5合目」からお中道を通り「お庭」を過ぎると、ついに「大沢崩れ」入り口の案内があった。しかし、その指し示す先は今までの遊歩道然としていた道からは程遠い草生え放題のがれた道である。5合目にあれだけいたツアー客も、いつのまにかいなくなっている。というわけで、本当にこの道で合っているのかという不安を抱えつつ後半に続く。(後半)

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