[an error occurred while processing this directive]
調査日:2002年5月27日
左が、新5合目からお庭までの途中で取った写真、そして左の写真がお庭というところを過ぎて大沢崩れ入り口の案内の前で取ったものである。道の整備具合の差がおわかりいただけるだろうか。登山経験が皆無で単独行動だった私は、この光景を目の当たりにしたとき正直どうしようかと思った。結局先に進んだのだが、何かあったときのことを考えると誰か一緒にいた方が絶対に良い。やっぱり仲間だ。
入り口を過ぎると、うっそうとした林の中をかろうじて道らしき跡が続いている。絶えず「迷ったんじゃないだろうか」という不安がよぎるが、所々設置されている道しるべがあるので、どうにか進むことができた。こういう所に設置してある道しるべは素直にありがたい。見つけたときに思わず顔がほころんでしまうほどうれしいのだが、直後にこんなとこで何しているんだろうという気持ちと、もしこのまま遭難でもしたらという不安に襲われて、精神的にへとへとである。ここが修験道の道なのだとか思った。おそらく間違った理解の仕方である。
薄暗い林を抜けると丁度中間地点の滑沢がある。視界が広がったことにちょっとほっとしつつ沢を横切ろうとすると、視界に違和感を覚えた。何かがこっちを見ているのである。「熊か、狼か」と一瞬わけがわからなくなるも、良く見るとカモシカである。そおっと近づいてもこっちをじっと見たまま逃げていかないのだ。しばらく見詰め合っていたのだが、いつまでこうしていてもしょうがないので歩き出すと、カモシカも山を登っていってしまった。今までもサルの集団にあったことはあるが、意図せず山で動物に遭うというのは単純にうれしい。
滑沢の後にもいくつか沢を渡らなければならない。写真は道順に「仏石流し」・「一番沢」・「前沢」となっている。ご覧のとおり、どの沢もいつ転がってきても不思議でないような相当大きな岩が落ちていたり、岸に生々しいえぐられた跡があったりと晴れた日ですら横切るのにどきどきしてしまう。というか、雨が降ったら怖くてわたれないと思う。
前沢を渡りきって少し歩くと、やがて向こうに立っている小屋が見えてきた。今は営業していない大沢休泊所である。「崩れ」の中では「五十年から此処にいる」という老主人が取り仕切っていたのだが、さすがに20年以上経った今ではしょうがないだろう。「崩れ」の文学碑(正面に大沢崩れの章の一節が刻んである)を眺めつつ、いよいよ大沢崩れは目の前である。
大沢崩れが目に入ってきたとき、意外な光景に一瞬訳が分からなくなってしまった。まるで造成工事でもやるために山を切り出したようなむき出しの岸壁がそびえ立っていて、いわゆる「自然」というイメージとあまりにもかけ離れた、まさに不自然な物が目の前に広がっているのである。また、耳を澄ましていると「からから」という石がぶつかる音が絶えず聞こえ、時々下流に向かって転がり落ちていく石を確認できる。なんというか「手のつけられない」景色が広がっているのだ。あいにく、頂上には雲がかかっていて上のほうが見えなくなっていたのが残念なのだが、崩れ自体は頂上から続いているそうだ。(大沢崩れの写真をクリックすると、縮小前の画像を表示します。また、動画も用意してみました。[QuickTime 769kB] )
大沢崩れ自体はメインルートから外れたところにあり、割と目立たない存在であるが、まさに災害が生まれるところを間近に感じられるという、結構貴重な場所だと思う。安全には十分に気を配りながらもいろんな人に見てほしいななどと思うのである。