茂沢防災ダム(群馬県)


調査日:2001年5月6日

 私は生まれてから高校まで群馬で生活していたのだが、家の近所には特に大きい川があるわけでもなく、日常生活にダムとの接点を持つことは無かった。しかし、私の学年よりも後の学年が遠足でダムに行くと言うことを知り、私の持っているダムに対する認識を一変させることとなる。というのも、この遠足というのは文字通り歩いて学校から目的地に向かうものなので、裏を返せば歩いていける程度の距離にダムが存在するという事を示しているのだ。つまり、ダムというのは遠くの山の中にあるものではなく、ごく近所にもあるものということになるのだ。とはいえ、具体的な場所がわかっていたわけではなかったから、この不思議な施設の存在に対して、気にはなっていたが実際に訪れるまでにはいたらなかった。しかし、あえて今回はこのある意味自分のルーツともいえるこのダムを訪れてみることとする。

 とは言うものの、歩いていける距離にあるということがわかっているだけで、実際にどこにあるのかということはまったく知らない。実際に遠足で行った弟や妹に聞いてみてもはっきりした場所を特定することはできなかった。そこで、国土地理院発行の2万5千分の1地形図からそれらしいところをしらみつぶしに見て回ることにした。

関係なかった貯水池 

 まず、始めに訪れたところは学校からは割と近くにある場所である。地図上では一見普通の貯水池に見えるが、池の下部から川がながれていたり、道路が池のすぐ下を横切るようにして敷設されていたりするので、ひょっとしたらという淡い期待を込めて車を走らせた。しかし、目的地にたどりついて目の前に広がっていたのは普通の貯水池だった。何の変哲も無い貯水池の周りで何かごそごそやっているというのは傍から見ると非常に怪しい気がして、早々に引き上げる。

 次の場所は、地図上でもはっきりとダムと形がわかるところである。ただ少しばかり小学校からは遠い気もするが、ともかく行ってみないと始まらないので一路目的地へと向かった。今度は実際に遠足に行った妹もいるので確実である。 なんか、気分的に。

住宅地

 地図上ではダムの近くに団地があり、ダムに行くためにはそこを抜ける必要があった。この自分とは無関係な団地に入るという行為は何か後ろめたい気持ちが付きまとう。別に悪いことはしてないが、あまりいい気分ではない。

茂沢ダム 下流から 分譲中の看板

 団地を抜けるとすぐそばに緑の壁があった。確かにダムとしては小さい部類に入るのだろうが、どうせ砂防ダムだろうなどと勝手に思っていこんでいたのと、自分の家の近くにあまりに意外なものがあったのとで素直に驚きを感じてしまった。 しばらく感慨にひたってぼーっと眺めていると、ふとダムの直下に「分譲中」とかかれているらしき看板が立っているのを見つけた。果たして、どういった用途に使うのだろう。確かにダムを超えて水が押し寄せることは無いだろうし、ダムが決壊することもまず無いだろうから普通の土地とそんなに変わらないだろう。しかし、好き好んで選ぶ人はあまりいないと思う。少なくともダムによる照り返しは草で覆われているといえ強烈な気がするし、かといって壁打ちやキャッチボールの相手にするには傾斜が邪魔になる。

立ち入っちゃった人たち ダム湖

 堰堤に上ってみると、先ほどまでの風景とは打って変わって、釣り人を中心に多くの人々で賑わいを見せていた。このダムは土を盛り立てて作ったアースフィルダムという形式のため、ダムの斜面が比較的なだらかである。だから、その気になれば斜面に降りることもできるのだが、普通は危険防止や堰堤表面の保護のために立入禁止になっていて、このダムにもそのような看板が立っている。しかし、ご覧のようにそんなことはお構いなく、堂々と立ち入っている。しかも(写真が無くて残念だが)「石を抜かないでください。」という看板も立っていた。ダムは危機に瀕している。

非常時洪水吐き 取水設備だとおもう

 さて、本来の目的である「ここが本当に遠足の目的地のダムなのか」ということを妹に尋ねてみた。すると、「確かに、名前は茂沢ダムなんだけど、もっとダムから水がシャーっとかでていたような...。」との答え。コンクリート以外のダムでは構造上、堰堤に構造物をつけることはできないようになっている。だから、もしそのことが本当ならば、本当の目的地は別の場所となる。が、あえてそのことは追求せず、「人間の記憶なんてあいまいなものだ。」ということにしておく。

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ダム名称
所在地
水系
河川名
ツーリングマップル
索引
茂沢防災ダム 群馬県渋川市 利根川水系
茂沢川
関東甲信越69 H-2